2015年3月5日

54 およすく会 / 「源氏物語」帚木

月に一度の読書会、「源氏物語」を原文で読む「およすく会」は「花散里」まで読了。光源氏の流刑という暗い未来を予感するところまでで一休みして、「帚木」に戻って読み返している。今回は世に言う「雨夜の品定め」を読んだ。若き貴公子たちの女談義だが、千年の昔も今も人間模様は同じであり、男が求める女の理想像が今も変わらないのが面白い。
男性が語る形をとっているが、作者紫式部は同性の女に対して容赦はしない。いい加減な生き方をする女に対して手厳しく、見事に女の様々な醜態を描いている。だが、その語り口には独特のユーモアがあり、同性の我々も苦笑いをするばかりである。ユーモアの質が高いのだろう。

ところで、今回は田中順子先生に驚くべきことを聞いた。他の講読会の参加者の中には「源氏物語」の講読会に参加していることを秘密にしている人がいるということである。「源氏物語」を読むことがまるで色情狂のように思われるからだと言う。いかに「源氏物語」が誤解され喧伝されているかである。やはり現代訳の影響は大きいのだろう。その最右翼は瀬戸内寂聴の物だ。彼女は自身も仏門に入りながら、仏教観に裏打ちされた紫式部の「源氏物語」の世界を捻じ曲げ、ただの性愛小説におとしめた。彼女を筆頭としたこういった訳を読んで「源氏物語」とはこのようなものなのかと誤解した人が、本物の「源氏物語」から離れてしまうのは大変残念なことだ。