2020年2月21日

240 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

旧知の演出家、芥正彦が三島由紀夫と激論した記録が入っているドキュメンタリー映画が完成し、試写会に芥と行く。これは50年前の東大全共闘と三島の対決を記録した物で、何年か前に秘蔵映像が見つかって、一部公開されたり、本に再録されたりもしている物だ。5年前にも三島没後45年ということで、その激論が行われた駒場の900番教室で特別講演が行われて、出かけて行った。パネリストの中にはまだお元気だったドナルド・キーンさんもいらして、そのお姿とお話の内容には感激したものだった。

今回の映画は、50年前そこに居た生き証人である芥達東大生、盾の会会員、数人の記者、そこへ4人の識者(平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴)が加わった計13人の解説、証言によって言葉の真実が紐解かれる。例によって寂聴は不要。どうしてこうも軽佻浮薄になってしまうのだろう。それはさて置き、一言で言って「面白い」映画に仕上がっていた。難解で理解できない所もあるが、時折笑いが起こるほど、ユーモアに裏打ちされた温かい映画でもある。懐かしさか…
今の時代には有り得ない熱さもある。あの時代、ノンポリであっても政治的な意識は高かった。時代の空気がそうさせたのだ。

内田樹はあの時代を「政治の季節」と呼ぶ。そして、こう述べる。
<政治的な季節の若者たちは時々ずいぶんひどい勘違いをしたけれど「自分には果たすべき使命がある」と思い込んでいたせいで、総じて自分の存在理由については楽観的であった。その点では非政治的な時代の若者たちよりもずいぶん幸福だったのではないかと思う。>

そうに違いない。