検査の結果、病名が確定された時の主治医の第一声である。
薄々は予測していたが、病名を宣告されて頭の中を色々な思いがグルグルと巡る中、長い付き合いとは病気?これから飲み始める薬?この目の前の医師?と、ぼんやり考える。結局はその全てなのだけど。
病院には長年行っておらず、これからも無いだろうと思っていた。よもや主治医と呼ぶような関係の医師との付き合いが始まるとは思いもしなかったことだ。S先生は信頼する人の紹介ということもあり、まずは第一段階はクリアしており、第一印象もとても良かった。失礼ながら、気取りが無く軽口を叩けるような方でもあり、私の素っ頓狂な物言いにも軽妙に受けて下さる。
大袈裟に心配する私に「君が急に悪くなる心配より、大地震でも心配した方が現実的だよ。近頃は突発の交通事故もあるしさ」「勉強も良いけど、あまり勉強しないようにね、不安になるから」と、心配を取り除いて下さる。それでも、我慢出来ずににわか勉強をして素人の質問をする私に「また勉強してきたな、仕方ない、教えてやろう」と、脳の模型をパカッと開けて説明して下さる。歩き方も良くなって、病気も治ったがごとく有頂天になっているお調子者の私に「山あり谷ありだよ」と釘を差すのも忘れない。この分野の重要ポストを歴任してきた偉い先生なのに丁寧で思いやりのある診察だ。話もよく聴いて下さり、つまらないことを言っていないで黙って付いてくれば良いんだ、というような高い所に居る方ではない。
「オレ、そんなこと言ったっけ?」なんて、トボけた物言いをすることもあり、笑わせてくれる。キャラクターが豊かでとてもチャーミングだ。「オレにそんなこと聞くの?」って、こんなことを聞けるのは先生だけでしょ?
河合隼雄に「患者は皆、精神科医に恋してしまう」という名言がある。私が通っているのは神経内科だが、人の心を大切にしたS先生の診察はまるで精神科のカウンセリングのようでもあり、弱った時の患者の気持ちが分かるような気がする。私もちょっと恋しているのかもしれない。(笑) 絶対に飲むまいと思っていた薬を飲んでいるのはそのせい? でも、そのお陰で姿勢も歩き方も良くなった。
そんな素敵な先生なので、私の話を聞いて、診てもらいたいという友人が二人も出てきた(ガタがくる年齢なのだ)が、予約が取り難い。先生も「あまり宣伝しないように」とおっしゃる。公人なので実名を出しても問題ないと思うし、ネットで調べればお名前もすぐ分かることだけど、ここでは敢えてS先生とした。宣伝すると、大好きな先生に叱られるので。

ウン年前の? S医師