2017年11月15日

158 日の名残り 

ノーベル文学賞がカズオ・イシグロに決まり、今年こそとばかりに書店の一番上の棚に並べられていたハルキに取って代わってカズオが並べられた。ハルキは無冠の帝王となるか?…それの方が文学者としてかっこいいと思うな。
カズオ・イシグロといったら何といっても『日の名残り』が思い浮かぶ。映画化もされ、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの二人のシェイクスピア俳優の名演技が忘れ難い作品である。この機会に改めて観てみようと思ったら、同じ事を考えている人が多いらしくDVDを借りるまでに大分待たされてしまった。
久しぶりに観たがやはり名作だ。そして、この映画を映画として名作たらしめているのは、アンソニー・ホプキンスに他ならない。驚くべき演技力だ。繊細な心の動きを微妙な表情で描写する。改めて心から感心した。
『日の名残り』という邦題も美しい。ほとんど直訳だが、きれいな日本語だ。映画の場合、とてつもなくヒドイ邦題があり、内容が良ければ良いほど失望させられる。最近でガッカリさせられた物に『おみおくりの作法』があった。これもイギリス映画だが、内容が素晴らしかったが故にこの題には本当に失望した。原題は主人公の小役人の人生そのものを言い当てているシンプルな題であったのに、まるでかけ離れているし、こんなセンスで邦題をつける人が映画産業に関わっていることすら嘆かわしい。