この義理の甥のケンちゃんは一流国立大学大学院の建築科を出て、都市開発事業に力を入れている一大企業のMビルに就職、多くの高層ビルの中でも一際異彩を放っている六本木ヒルズの中のオフィスに勤務していた。拡大、拡大で来た日本の不動産業界の代表格のMビルの役目はそろそろ終わりだろうと私は思っている。ケンちゃんも「Mビルはもう大きい物しか造れないでしょうね」と言う。真新しい高層ビルばかりでは街の魅力は損なわれ、古い物が残っている街に人は惹かれ始めている。故郷の浜松で再スタートするというケンちゃんの決意を聞いてとても共感した。
これからは地方創生の時代だ。感性が豊かな人ほど既に地方に着目している。ケンちゃんには建築家としての経験と知識を大いに活用して、地元を活気付け、地方と都会の新しい関係作りに力を入れて欲しいものだ。私は、子どもがまだ小さい若い家族には東京の環境はあまり良くないと常々思っていた。第二子が7月に生まれる予定の若い夫婦にとって、地方に移るのは丁度良い時期でもあろう。
サツキちゃんとはゼロ歳児から2歳ちょっとまで、日々目覚しく成長する一番可愛い時期に共に時間を過ごすことが出来て実に幸福だった。所詮幼児なので、ぐずったり泣いたりしていよいよ駄目な時は早く帰すことにしていたが、帰したのは3、4回だった。立派な勤務ぶりであった。実際に仕事をしたのはあなたの「オカアシャン」だけど、サツキちゃんは職場のスタッフの皆を笑わせ、元気にし、癒してくれるという任務を充分に果たした。ご苦労さま、ありがとう。
最近は2歳児の反抗期の冷たい態度をとって私を悲しませていたが、別れが分かるのか、最後に抱き上げたら彼女の方からギュッと抱きしめてくれ、ほっぺもスリスリしてくれた。もう私は泣くしかない。