2016年3月13日

97 3月は旅立ちの時 / 「子どものための日本文化教室」修了式

「子どものための日本文化教室」第11期の修了式を茶道会館にて行った。
子ども達は一年間を通して、能「西王母」の謡を稽古してきたので、北見宗雅先生が茶室も「西王母」の趣向に設えて下さった。
今期はお茶会形式での修了式なので、子どもがお菓子を運び、お茶を点てて保護者をもてなす。盆略ではあるけれど、お点前も披露する。小さい子は3歳からの幼児なのでお茶を運ぶ時にこぼさないだろうかと心配するが、集中力を発揮してそろりそろりとしっかりと運ぶ。親の膝前に茶碗がそっと置かれた時が安堵する瞬間だ。多分、親もほっとするに違いない。自分の子どもが点ててくれたお茶なのだ。きっと美味しいことだろう。実際、子どもには雑念も無く腕に余分な力を入れないので、点てたお茶はほんのり甘い。

この教室は小学校6年生までなので、今年は2人の卒業生がいた。
男の子のR君は、私が知人に強引なくらいに誘って参加してもらい、3年間も通ってくれた。
腎臓ネフローゼの持病がある中、よく続けてくれたものだと心から感謝している。持前の性格もあるのだろうけれど、闘病の中から獲得した人生観のようなものが身についていて、大人びたところがある彼は、女の子によくもてていた。ホルモンが変わる年令であるこの時期に、病気が良い方向に向かってくれるように願うばかりである。
もう1人の卒業生、女の子のSちゃんは1年生の時から6年間通ってくれた。最初の頃は泣いてしまう事もあり心配だったが、みるみる内にしっかりしてきてこちらが寂しくなるくらいだった。教育熱心なお母さんは、彼女にこの教室以外に4つもの稽古事をさせていて、か細いSちゃんはこの教室にたどり着く頃には疲れていたのだった。知らない子達の中に放り込まれて泣きたくもなる。「和の稽古をすれば姿勢が良くなるだろう」というお母さんの目論みは今でこそ達成されたが、当初は体力が無いのと疲れとで腰が曲がっていて、彼女の後姿は小さなお婆さんみたいだった。今や、スラッとしてピンと背筋もまっすぐに、皆のお手本のような存在でもあり、素敵なお姉さんになった。
成長期の真只中の貴重な時間を、共に過ごせたことに感謝したい。
別れは寂しいが、新しい旅立ちの時でもある。4月から二人は中学生なのだ。子どもから大人へと一気に成長する複雑な時期に、文化教室で学んだ和の精神が少しでも役立つようにと願う。