そうこうしながら一つだけ片付けをしようと思い立つ。下着類だが、消耗品に近いので折に触れ少しずつ処分してきているから、すぐに出来るはずだとも思ったのだ。予想通り、自分の決めた基本数を揃えることが出来た。処分するのは12点あった。
元々、若い頃から締め付けの強い物は嫌いだった。ガードルなんて物は今まで数回穿いたかどうかで、30代中頃の身体の線が気になりだした頃、結婚式に招かれて着た薄いドレスの時は久しぶりにきつくないガードルを買って穿いたものだったが、せっかくの高級料理もゆったりと食べられずに途中で脱いでとうとうトイレのゴミ箱に捨ててきたくらいだ。ヒッピー文化などの影響で時代の空気もあって、若い頃はノーブラで過ごしたこともあった。時の経過と老化と重力の法則で他人様に見苦しい物を見せる訳にも行かなくなり、自分でも落ち着かず、ブラジャーは着けるようになったが、何よりも着け心地優先だった。そうこうする内にブラ付キャミソールという便利な物が出だし、ずぼらな私はすぐ飛びついた。ところが、若い子たちが行くような店の物は、ブラの位置が高くカップが厚く、どうもしっくりこない。ちょっとダサいデザインだが中高年向きのメーカーの物を試したら、何とも楽ちんではないか! とっくに中高年なんだからあたり前なんだけど…
若い頃は歳をとってもババ臭い下着だけは絶対身に着けたくはないと思っていたが、こうやって自覚させられるのだ。
ババ臭いと言えば、オバサン、オバアチャンの原宿と言われて久しい巣鴨には、健康増進、厄除けの為の「赤いバンツ」があるということは以前から知っていたが、勿論買うつもりなどこれっぽっちも無かった。ところがある日、もらってしまったのだ! 仕事のスタッフの I は本業は女優だが、まだまだ食べられず合間に私の手伝いをしてくれているのだが、舞台衣装であるモンペを買いに行った(巣鴨にはあるのだろうなあ)ついでに赤パンツを買って来たのだそうだ。彼女は私の事を「ボス」と呼ぶ。「ボス!腰を冷やさないで健康に気をつけて下さいね!厄除けにもなるんですよ!」
ウ~ン、男の厄なら欲しいくらいだってば。オバサン扱いされてガックリする私に、彼女は自分の分も買ってきたのだと慰めにもならないことを言う。彼女はほぼ20歳程私より年下なので、まだまだオバサンなどではない。その後彼女が言うには、彼女は舞台に立つ時は必ずこの巣鴨赤パンツを穿いているのだそうだ。まさにある意味「勝負パンツ」なのだ。舞台の彼女を観る度に「このモンペの下はあの赤パンツか」「このセクシーなドレスの下も赤パンツか」と、想像力がかき立てられる。赤パンツの効果か、舞台の上の彼女はいつもはち切れんばかりに元気だ。
今回残した物は、ブラジャーがいらないカップ付キャミソールを9枚、締め付けないショーツを18枚、きちんとした格好をする時のブラジャーを念の為に3枚、真冬用の発熱下着を3組。着心地が良くて便利で、コットンかシルクのオーガニックな物を厳選した。これで下着の整理は終わり。丁度、引き出し一杯に収まった。他のグッズと同じで、ワンアウト、ワンイン、一つ捨てたら一つ補充するだけだ。