今回は富士屋ホテルに泊まり、一晩はフレンチを楽しみ滋養をとろうという計画なので、箱根には行ったことが無いという姪に、良い機会だからと一泊だけつき合ってもらう。何処でも一人で出かける私だが、どうもフレンチは一人食に向いてないような気がするのだ。
富士屋ホテルのある宮ノ下は骨董の店などがあり散策するのも楽しい所だ。大好きな温泉「函嶺」もある。ここには以前は泊まったこともあったが、今は宿泊はやっていないそうだ。大正時代に建てられたという、病院だった古い洋館が何ともノスタルジックだ。ここの露天風呂の眼前には竹林が広がり、温泉浴と竹林浴とで癒し効果は抜群である。隠れ宿みたいな所なのでお客さんも少なく、いつも貸切状態だ。
初箱根の姪を案内すべく、箱根登山鉄道とケーブルカーに乗る。景色も昔と変わらずスイッチバックなんかして楽しい電車だ。数年前からの噴火騒ぎでロープウェイは止まっているとは聞いていたが、この日は悪天候が重なって全面停止だったので、バスで芦ノ湖を目指す。湖尻に着いて周りを見回すも人っ子一人居ない。船も停止。霧のたちこめた芦ノ湖。初めて見る光景だ。バスでまた戻るのではつまらないので、芦ノ湖湖畔の道を歩いて九頭龍神社に向かう。深い霧の中を誰にも会うことが無く、何メートルか先は何も見えない白い世界を姪と二人でひたすら歩く。これはこれで新鮮な体験だった。
結局、姪は芦ノ湖も富士山も見ることが無く、初の箱根の旅を終えた。だが、さすがの富士屋ホテルの部屋と食事とサービスに満足して、東京の日常に帰って行ったのだった。
翌日は晴れ渡り、前夜の雪が真っ白に降り積もった富士山が見えるはずだった。…が、私が居る間は結局は富士山は雲に隠れたままだった。空は青く見事に晴れているのに富士山だけが隠れている。富士山にはそういうことが時々ある。