2015年12月17日

88 「お召し列車」 燐光群公演

燐光群は好きな劇団の一つである。作・演出の坂手洋二には「天皇と接吻」という名作があり、天皇制問題は彼の重要なテーマでもあるので、その方面のストーリーと思いきや何とハンセン病がテーマであった。天皇を乗せるための特別列車である「お召し列車」の名称が、ハンセン病患者を国立療養所に集めるために運行した列車の隠語としても使われていたのだと言う。何という皮肉であろう。日本が戦争に向かう頃、ハンセン病患者への差別が強まり、その隔離のための「強制収容列車」が繁茂に運行されたのだそうだ。
日本におけるハンセン病への差別は根深い。治る病気、伝染しない病気と認識されてからも「らい予防法」はむしろ強化され、平成8年にやっと廃止された。坂手はその酷い差別の歴史を振り返り、過去を忘れてはいけない、見つめよと訴える。
最近、映画「あん」でもハンセン病問題が扱われた。こういった過酷な体験、差別を受けた方々も高齢になった。戦争体験者も高齢化している。まだ彼らが生きている内に、もっと生の声を伝えるべきであろう。日本が本格的な健忘症国家になってしまう前に。

それにしても、差別とは想像力の欠如に他ならない。
ジョンレノンは30年以上前に想像力の力を「イマジン」によって、訴えていた。感動と共に聞いたあの頃、21世紀には少しはこの歌の内容に近づいているだろうかと思ったものだが、世界はますます混迷の度合いを深めている。今や、第三次世界大戦が起こりかねないような状況だ。