2015年7月6日

70 コスタリカの亡命ロシア人

ロシアのアウトカーストの唄を歌う石橋幸に会いたい、是非コスタリカに来て歌って欲しいと、コスタリカの亡命ロシア人が言ってきている。と、コーディネーターのエレーナからの言付けがあり、近々来日するとも。折悪しくロシアに行って日本を留守にしている石橋から、代理に私が話を聞くように頼まれていた。勿論、私はロシア語などしゃべれない。敬語も正しく使えるくらい日本語ペラペラのエレーナが間を取ってくれる。コスタリカから来日したロシア人夫婦は昨日、日本に着いたばかりで、私は夕方まで仕事で会えないし、エレーナは今夜の深夜発の便でモスクワに発つという合間に会うことになった。そもそもの主要人物である石橋はロシアだ。人が聞いたら、どんな国際派で忙しい人たちなんだ!なんて思うくらい不思議な出会いの時間だった。
全員が初対面。だが、待ち合わせ場所の寿司屋(築地!)に入った途端にすぐに分かった。エレーナは絵に描いたようなぽっちゃりロシア女、コスタリカ組もある種のロシア人の典型的な顔だ。ご主人のセルゲイ(なんとベタな名前!)はタルコフスキーに似ている。奥さんはオルガという名前だ。太郎と洋子というような感じかな。
よくよく聞くと、彼らは亡命者ではなかった。ペレストロイカの行先が見えない不安で業を煮やしていた頃には「亡命」が頭をかすめていたが、結局は正当に出国しているのだった。二人とも医者のインテリ夫婦だ。「コスタリカの亡命ロシア人」の表題を変えなかったのは、これがまるで小説か映画のタイトルみたいで、言葉の響きと共にちょっと気に入ったから…
実は、コスタリカと聞いた時に、石橋と「行きたいね!」という話になった。コスタリカは戦争を放棄して豊かになった国だ。対照的に隣国のドミニカ共和国などはいまだに戦争の恐怖と貧困にあえいでいる。コスタリカは、戦争がもたらすものは悲惨と空虚でしかないことを、戦争を放棄することによって改めて知らしめてくれたのだ。太平洋にも大西洋にも面していて、海も山も自然が大変豊かだという。反共の国ではあるが、共産主義の洗礼を受けているロシア人にもなじみやすい文化と人情があるのだそうだ。
行きたい国が一つ増えた。勿論、トランクひとつになって出かけるのだ。