色々と言われたが、極めつけは、友人Hの言葉である。「そんなことをしたら、あなたが死んでしまうんじゃないかと思って…」 死を予感した人間が、身辺整理をする話はよくあることではあるが、そこまで飛躍するか!という感じである。私は死にません! いつか死ぬ時まで、快適に楽しく生きるために身軽になるのです。さっぱりするために垢を落とすのです。
舞台女優、歌手であるIは、普段は着なくなった服が時代考証や役柄によって役立つことがあるから、衣服類は捨てられないと。靴もアクセサリーもしかり。翻訳家でもあるから本も山のようにある。彼女はある時、片付けはもうしない!と決心し、宣言をした。彼女も独身なので何かあった時に他人に迷惑をかけたくないという思いはあり、その課題に関しては「片付けにかかるお金を残す」という結論を出して、信頼する若者に託しクリアした。調査をしたうえで、200万もあれば良いんでしょうと。これでもう片付けのことなんて考えないんだと言うのを聞いて、それもありかなあと私もちょっと傾いた。しかし、私の「トランクひとつ」願望は、結構年季が入っているので、結局そちらの考えに行くことは無かった。
40代の友人Kさんは「片付けなんて無理、無理!全てお気に入りの物に囲まれているので、何一つ捨てられません!」と言う。これは私もそうだったので、よく分かる。40代ともなると経済的にも余裕が出来、目も肥えて、良い物も身の回りに増える年代だから、そう言うのも無理もないだろう。こだわって求めた物に囲まれた生活は幸福だ。まだ若い時は充分に楽しめば良いと思う。
「どう?トランクひとつに出来た?」と友人Sは問う。さすがにこの短い間には無理だ。それにガラクタとは言え、これらの物は何十年と生きてきた証しでもあるので、ポイポイと行かない時もあるのだ。私にとって片付けとは、嫌いな物を捨てることでは無く、好きな物を残すことなので、無理をせず楽しみながらやろうと思う。
そうこうしている内に開かずのダンボールを一つ見つけた。まったく着ないであろう洋服だったので早速処分する。気がついた時にすぐやること、先延ばしにしないことも大切だ。