難病だった…
色々と疑われたが、検査の結果は紛れもないパーキンソン病だった。やっぱりか…素人考えでも自分で最初に疑った病気だったのだ。
思えば昨年くらいから、傍目にも異常が分かる私の姿を見た家族や友人、周りの者から「せめて検査を」の声が高まった。親友のSは「あなたの主義で化学的な治療をしないで薬も飲まないのも良いけれど、検査だけはして現状を知っておいた方がいいんじゃないの?」と心から心配して言ってくれた。この頃からさすがに検査に心が動いた。でも、どこの何科に行けばいいんだ?病院は行き慣れていない。
とそこへ、私の尊敬する能楽師M師の奥様S夫人が、見るに見かねてM師の主治医を紹介してくれたのだった。S夫人もなるべく薬には頼らない主義なので、私の気持ちをよく分かってくれている。治療をどうするか自分の考えでやれば良いけれど、まずは自分の身体の現状を知るのは大切で、その為には信頼できる医者をということで、S先生に話をつけてくれたのだ。運が良いことに病院は近所にある東海大学付属病院だ。S先生は神経内科のベテラン、専門医として長年の経験を積んでいる。白衣の胸元から見えるワイシャツもネクタイもいつも素敵でおしゃれな紳士だ。お茶目なところもある魅力的な人で、人の心を大切しており思いやりのある診察をしてくれる。
初期検査から難しい病気が疑われ、結局は最新機器で徹底的な検査をしようということになり、先生が院長を務めあげ、今でも時々現場に出られる立川病院に二日間出かけることとなった。
立川病院は建物も新しく立派な病院だ。
検査は完全予約性のせいか、検査室の近辺には人がおらず、閑散として、不気味な(と、私は思う)機械音が低く響いているだけだ。コワイ…
噂のMRI(経験はなくともそのくらいは知っているのだ)の筒(!)に入る前にうるさいからと耳栓をさせられる。それは想像以上の騒音だったが、電子音だから、今時のノイズミュージックのようでもある。そう思って我慢をしようとノイズに曝される。ギュイイーン、ガガガガガ、ジジジ、ビビーン、何ともウルサイ。その内、トントントントン、カンカンカンとパーカッション音。あっ、噂の輪切りが始まったなと思う(このくらいも知っているのだ)これが後に断面図となって示されるのだな。
MRIの他に、CT、ダットスキャン、アイソトープetc.…放射能系の物にも身をさらす。
日本人は検査のし過ぎで被曝して却って被癌率も高いという話も聞くが、私は10年以上も検査をしていないし、そんな調子でこれを人生最後の検査としたいものだと、放射能入りだという注射を刺されながらも思う。心臓は苦しくないか、頭は痛くないか、気持ち悪くはないかと色々聞かれて、そのくらい危ないのか?と却ってコワくなる。もう後戻りは出来ないけれど…医療事故防止とは言え検査の前のチェック項目も多く、驚く。
薬はもう30年来飲んでいないが、この際、まっさらな状態で身体の現状を知りたくもあり、検査の前の半月程は一切のサプリメントも止めて検査に臨んだのだったが、結果は難病という嬉しくないものだった。だが、不幸中の幸いというべきか、血液検査のデータだけ見ると見事な健康体なのである。2件程数値が少し高いだけで、後はしっかり基準値内におさまっている。ある意味、これまでの健康志向は間違っていなかったとも言えるのだ。他の病気は一切心配ないと医師も言う。難病持ちの健康体という変な身体だなあと思う。
脳内の黒質からのドーパミンの放出が少なくなり、たった2㎝程の線条体の異常で身体全体の動きに影響が出るという、脳の働きと身体の不思議。
難病とは、原因が分からず治療方法が見つかっていない物を言うそうである。一生の付き合いになり、治すのではなく進行を止め現状を維持するのがせめてもの治療だという。
そうかなあ、と天邪鬼な私は思う。今まで信じてやってきた事、自然治癒力や免疫力を高める方法が血液検査の良好な結果に出たのだとするのであれば、難病にだって効果があるような気がするのだ。とはいえ、そうやって身体に気をつけていたのに厄介な病気にかかってしまったのも事実。まずは一番弱い物で1日1錠ということなので、取りあえずは薬を飲み始めたが、自然療法もしっかりとやっていこうと思っている闘志満々の私である。