2014年11月25日

42 石橋幸コンサート「僕の呼ぶ声」

石橋幸コンサートが一週間後に迫って来た。リハーサル、スタッフ打合せ、ホール打合せと徐々に具体的になり、緊張感が増して来る。この仕事は、私が最も大切にしている物の一つである。本格的に関わるようになって20年近くなるが、出会えて良かったと心から思える仕事だ。石橋のお陰で、日本人がほとんど行かないシベリアの果ての極北の街マガダンにも行けた。
石橋幸の凄いところは、スターリンの圧政によって閉じ込められていたロシア人さえも知らない唄を、自分の足で拾い集めたことである。ジプシーや囚人、貧しい人々が秘かにしぶとく歌い継いできた唄には情感と力強さがある。底辺に生きる人たちの生活や心の暗闇からたちのぼってくるいくつもの物語の中には暗くても情感豊かな世界がある。
また石橋は、唄はそれが生まれた言葉で歌われるべきだという主義の元に徹底してロシア語で唄うスタイルを通している。それが壁になっていることもあり日本では認める人も少ないが、ロシアでは石橋はその功績を認められ、シャンソンゴーダ特別賞を受賞してクレムリン宮殿で歌った唯一の日本人でもある。だが勿論、日本にも熱心な支持者がいて石橋の唄に感動し、涙を流す。作家の中上健次も石橋の唄と声を認めた一人である。

日本に居ながらも世界各地から様々な音楽が入って来る現代の情報社会であるが、ポピュラーなヒット曲だけが注目されるのが現実でもある。日本では聞くことが少ないジプシーや囚人の歌には言葉を超えた力強さがあり、国や民族が違っても人々の営みには変わりがないことを伝えてくれる。それが日本人の感性にも合うということを石橋の唄を聞いて感じて欲しいものだと思っている。





2014年11月11日

41 〇


ビールやフランクフルトだのドイツは良いけど、ニューヨークはどうだったの、と友人に問われる。
確かにあんなに大騒ぎして行っておいて、報告無しはないだろうと自分でも思う。実際、久しぶりのニューヨークはとても楽しかった。ミュージカル「ラストシップ」も素晴らしかった。それは近々改めてご報告したい。
また、10月予定していたアイテムの整理もまだだ。11月分と一緒に一気にやろうとは思っている。

親しい友人の死で、何もかもがすっ飛んでしまっていた。私は何をする訳でもないが、何か気が抜けてしまっている。こんな風に過ごしていると、一ヶ月なんてあっと言う間なのだなあと改めて実感しているところだ。


2014年11月4日

40 文化の日の散歩


11月3日「文化の日」、思いがけなく休みになった。家でボーッとラジオを聞いていたら青山公園でドイツフェスティバルをやっていて、本格的なドイツビールやフランクフルトソーセージが楽しめるとのこと。他の事も言っていたが、そのことしか耳に入らない。食文化も文化である。
外は気持ちの良い秋晴れで、暑くもなく、寒くもない。歩くにはもってこいの気候だ。青山公園は歩けない距離では無い。むしろ歩いていくとビールが美味しく感じるくらいの距離ではある。
思えば、今春から右膝が不調で、緑の美しい季節には転ばないように下ばかり向いて歩いていたような気がする。暑い季節にはタクシーに乗ってばかりいた。このところやっと、平坦な道を歩く分には苦にならないくらいに回復していたので、歩こうと思っていたばかりである。元より歩くのは好きだ。
外苑を抜けて、青山一丁目方面から行こうと決めて歩き始めたが、しばらく運動不足だったことを感じることも無く、風が気持ち良い。外苑のイチョウ並木は少し黄色く色付き始めている。この辺りで上着を脱ぐくらい少し汗ばんで来た。本格ビールが美味しいぞ!と青山公園を目指す。目論見通り、公園に着いた頃は丁度いい感じの喉の渇き具合。あまり大きくない公園なので小じんまりとやっているのかと思っていたら、どこから聞きつけてやって来たのか沢山の人!売店にも列が出来ていて、少ない列に並ぼうかという誘惑(早く飲みたい!)に負けそうになったが、せっかくなので吟味して美味しそうな店に並び、ビールとフランクフルトをゲット。勿論、ザワークラウトも忘れない。その美味しかったこと!
デザート類は何も売っていなかったので、帰りに青山辺りのカフェに寄ろうと(どこまでも食文化の日)、帰りは違うコースで家路につく。公園を出ると通りを挟んで向かい側にある「新国立美術館」が異彩を放っている。ここにも何回かは来たが、私にとって足繁く通うような魅力的な企画内容が少ない。青山墓地(既に公園のようなもの)を通り抜けて、根津美術館、骨董通り、表参道を歩いて帰宅。
青山では路地に入ってウロウロしたので、都合2時間も歩いた。驚くほど沢山の店が増え、また驚くほどの人が集まって来ている。街中に突然お城が出てきてビックリ。お城ではなくて「…大聖堂」という名の結婚式場だという。教会でもない大聖堂でどんな人達が結婚式を挙げるのだろうか。今更ながらだが、今や結婚式は儀式ではなくイベントなのだろう。などと、様々な趣向を凝らした新しい店を見ながら、以前は青山はもう少し静かで大人のお洒落な街だったなあと感慨にふける、そんな文化の日であった。