2014年10月28日

2014年10月21日

38 さようなら徹ちゃん

俳優で演出家の花房徹が、10月7日朝、永遠の眠りについた。享年63才。これからまだまだ俳優として味の出る年頃だった。亡くなってもう半月も経ってしまったが、私としては、彼とのつき合いの長さと近しさから、まだとても客観的に彼の死を見つめることが出来ない。思えば40年近いつき合いだった。
最初の出会いは、立動舎公演「春のめざめ」(ヴェデキント作)。若者の性がテーマの芝居で、演出の福田善之はエロティックな場面をいくつか作り、花房もお尻をむき出しにして客席の方に突き出すシーンがあった。お茶目なイメージはその頃からだ。
花房はエノケンの再来とも言われ、フランスのアビニョン公演ではルモンド紙に「チャップリンのよう」と評された。軽妙洒脱、自由闊達な演技に定評があった。
だが、彼は「主流」というものに背を向けていたので、その演技力が社会的に広い所で評価されることはあまり無かった。その代わり、熱狂的な支持者もいた。そして、何よりも舞台を大切にしていた。殊に息づかいが伝わるような小さな空間に拘った。そういった小さな空間での、病が発覚してからの舞台には目覚ましいものがあり、死を身近に感じてからはより自分の目指すものに近づいたような気がする。
最後の舞台は息子との二人芝居だった。今思うと、声も出ていて、その一ヶ月後に亡くなる人の演技では無かった。そんな時期なのに、相変わらず飄々として哀愁があって、とても彼らしい舞台だった。その日集まった人達の記憶に長く残ることだろう。

今年は、舞台美術家の朝倉摂さんも亡くなった。私は朝倉さんに誘われて立動舎に入ったので、朝倉さんは花房との縁を作って下さった方とも言える。
また、斎藤晴彦さんも亡くなっている。花房は晴彦さんととても仲良しだった。もう十年以上前だったかと思うが、グローブ座の帰りに「大久保が今スゴイことになっているらしいから、見て帰ろうぜ」と晴彦さんから誘われた花房がホテル街に佇むアジア系の女性達を興味深く見ていたところ、「徹!きょろきょろするな!さっさと歩くんだ!」と叱られたそうである。「だって、見ようって言ったのは晴彦さんだよ。見ようって言ったと思ったら、見るな!だぜ」と不満顔の花房。二人で居るだけで漫才のようであった。
あの世への道すがら徹ちゃんはあの大きな目を見開きながら、興味津々とばかりに道草しがちかもしれない。晴彦さんが「徹、トール!きょろきょろしないで早く来い!」って言ってくれるだろうか。
お二人の他にも花房と親交があった演劇人が、このところ何人も旅立たれた。
花房とも古くからのつき合いの女優の中山マリが言う。「向うの方が何だか楽しそうよね」
そうに違いない。まあそう遠くない将来に私達も行くことになるだろうから、しばらく待っていて下さい。それまでは、徹ちゃんの分まで精一杯生きましょう。
寂しいけれど、この世ではもう会うことは無い。

ひとまずは、さようなら。

2014年10月12日

37 〇


取りあえずは。

2014年10月3日

36 〇


NYより無事帰国。帰りの飛行機でよく眠り、リムジンバスでも爆睡、帰宅後も熟睡したので、今日はすっかり元気で仕事を始めた。