例年9月には、夏服を保管に入れ春秋物を保管から出している。以前下北沢に住んでいた時に近くに白洋舎があり、この保管サービスを知り、以来25年程利用している。何よりも保管状態が良いことと、収納場所に限りある者にとっては便利なサービスだ。
保管クリーニングに出す前に思い切り夏服を整理した。やはり何年も着ていない物がまだあった。整理の前に同じアイテムの物を全部出してみるのが整理の基本ということで、ベッドの上に夏物全部をドサッと重ねる。三年前にあれだけ大整理したはずなのに116点あった。
それをまた「ハレ、ケ、予備」の三つの観点から選り分ける。まだ現役中なので、更に現役中、予備と二分野を加える。それぞれに、アウター、インナー、ボトムスの三種類に分ける。3×3×3=27点に絞らなくてはならない。夏は汗がちなのでインナーはそれぞれ二倍にしよう。それでも合計36点。かなりのスリム化だ。引退後、最終的にはトランクに12点。やれるかどうか、残した物でどのくらいもつか、来夏分かるだろう。
ジャズピアニストの渋谷毅さんは、毎日同じ格好をしている。洗い晒しのダンガリーシャツにジーンズ。寒くなるとその上にセーターを着て、更に寒くなるとコートを着てマフラーを巻いたりする。冠婚葬祭もそれで行くという。勿論、ステージもそれでつとめる。演出上、黒い物を来て欲しいことがあり、恐る恐る尋ねると、用意してくれれば良いよと快諾。拘りつつも柔軟な人だ。
ピアノの無い劇場で演奏をしてもらう時に、アマチュアが借りるようなエレピで演奏をしてもらわなくてはならず申し訳なかったのだが、嫌な顔もせず弾いてくれ、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。そんな凄い人だから、毎日同じ格好の渋谷さんを見ていると、彼にとってこのスタイルは僧の法衣みたいな物かもしれないと思った。自分にとって大事なもの、究極のものを見つけた人は、そのこと以外は何の拘りも無く、その道をひたすら淡々と歩み続けるのではないだろうか。
そんな風に生きられたら幸福なのだが、凡庸な私はそんな人達に憧れているばかりである。